Lesson6-5 サイバー攻撃の被害に遭った時

これまでサイバー攻撃の対策や、
脆弱性を調べるテストなどについて解説してきました。

しかし、IT分野のセキュリティにおいては、
攻撃側と防御側では、”攻撃側”が圧倒的に有利とされています。

それは、攻撃側は攻撃者同士で手口を情報共有していますし、
攻撃者がどのような攻撃をしかけてくるのかも、
防御側は予測するのが難しいからです。

さらに、未知の攻撃をされてしまった時には、
ほぼ防御するのは不可能なのです。

もちろんセキュリティは非常に重要ですが、
それでもサイバー攻撃を完全に避けることは不可能です。

「被害に遭ってしまうこともある」ということを念頭に、
実際に攻撃された時に冷静に対処できるよう、
対応方法をこのレッスンで学んでおきましょう。

不正アクセスされた時

不正アクセスされたことが判明したら、
被害が大きくならないようにする必要があります。

まずはサーバーや端末をネットワークから遮断し、
パスワードを変更しましょう。

端末の遮断が終わったら、
どのような手口で攻撃されたのかを調べます。

不正アクセスは法的に禁じられた犯罪です。

サイバー攻撃の捜査をする時、
攻撃のデータやログなどの証拠が必要になるため、
「デジタル・フォレンジック(※)」の調査をしてくれる
専門業者に依頼しましょう。

第三者による調査が行われることで、
客観的な証拠を入手することができます。

調査の結果が出たら、
専門家の意見も聞きながらそれに応じた対応をしましょう。

(※)デジタル・フォレンジック:デジタル機器に保存された情報を解析して、
犯罪捜査や訴訟などのために証拠を明らかにする技術のこと。
被害に遭ってしまった時の原因を突き止める。

マルウェアに感染してしまった時

マルウェアに感染していることがわかったら、
感染した端末をネットワークから物理的に隔離します。

マルウェアはネットワークを通じて感染を拡大していくからです。

具体的にはWi-Fi接続、有線接続、Bluetoothなどの機能の遮断です。

そしてセキュリティツールを使って、
マルウェアの削除をしましょう。

それでも端末の不具合が続くようなら、
端末の初期化をするのがもっとも確実です。

このような時のために、
定期的にバックアップしておくことが重要です。

情報漏洩していることがわかった時

情報漏洩が発覚した時、
大切なのはそれ以上被害が拡大しないようにすることです。

情報漏洩した端末をネットワークから遮断し、
外部からアクセスできないようにしましょう。

顧客情報などが漏洩してしまい、
外部に被害者をつくってしまった場合は、
個人情報保護委員会(※1)に報告する義務が発生します。

関係者への連絡や公表も必要になりますが、
公表については注意しなければならないことがあります。

それは、ゼロデイ(※2)による被害に遭った場合です。

(※2)ゼロデイについてはLesson5-4を復習しましょう。

脆弱性があることを攻撃者に知られてしまう恐れがあるからです。

公表にあたってのリスクを検証するために、
セキュリティツールを提供している事業者や、
警視庁のサイバー犯罪窓口などに相談し決めましょう。


(※1)個人情報保護委員会に報告するのは次のような場合になります。

  • 要配慮個人情報が含まれる事態
  • 財産的被害が生じるおそれがある事態
  • 不正の目的をもって行われた漏えい等が発生した事態
  • 1,000人を超える漏えい等が発生した事態

参照:個人情報保護委員会

再発防止のために

サイバー攻撃の被害に遭ったら、
被害の発生がわかった時点から復旧までを記録しておきましょう。

セキュリティ対策の問題点や、被害時の対応手順を見直して、
再発の防止に努めてください。

▶︎被害に遭った時のまとめ

①情報漏洩が発覚したら、自分で判断することは避け、
上司やセキュリティ担当者に報告する。

②被害が拡大しないように措置を取る。
(感染端末をネットワークから遮断する)

③外部(第三者)に被害が及んでしまった場合は、
連絡をする。
ゼロデイによる攻撃の公表は、関係機関と相談の上、対応を決める。

④個人情報保護委員会へ報告する。

⑤犯罪の場合は、警察へ連絡する。

⑥再発防止について検証する。


Lesson6では、サイバー攻撃の対策や、脆弱性を調べるためのテスト、
そして攻撃された時の対応について解説してきました。

日ごろからサイバー攻撃の手口や対応策にアンテナを張り、
セキュリティ対策を意識しておくことが何より重要です。

Lesson7からは、会社でITセキュリティ担当者となった時に、
役に立つ基礎知識を学習していきましょう。